障害年金の障害等級は、障害認定基準等に基づいて認定されますが、過去において、精神疾患等の認定結果に、都道府県単位で大きな格差があることが確認されました。こうしたことを踏まえ、精神疾患等の認定が当該障害認定基準に基づいて適正におこなわれ、地域差による不公平な結果が生じないようにするため、厚生労働省に設置した、専門家検討会において、障害年金の等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや、適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。その結果、精神疾患等の認定の地域差改善に向けて対応するため、『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等を策定し、平成28年9月1日から実施することになりました。障害年金の精神疾患の診断書は様式第120号の4を使いますが、裏面の左側、7つの項目に分かれている「日常生活能力の判定」と右側、「日常生活能力の程度」を数値化して、ガイドラインの「等級の目安」の表に当てはめて、どの障害等級に相当するかの目安がわかるようになっています。しかし、「等級の目安」の表だけで等級が判断されるものではなく《留意事項》として、「障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得ることに留意して用いること」とあるため、「等級の目安」の表だけではなく診断書の他の各項目や記載内容が等級を決定する上で重要であると考えています。また、診断書内の日常生活の能力の判定の箇所に赤字で(判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください。)と記載されています。これは、医師が、日常生活能力の制限の度合いを適切に把握するため、入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居などにより、支援が常態化した環境下で日常生活が安定している場合であっても、単身でかつ支援がない状況で生活した場合を想定し、その場合の日常生活能力について記載することになっています。もし、患者が家族と同居しているならば、一人暮らしをした場合、日常生活(7つの項目)について、どのようになるかという観点で判断します。家族と同居している場合は、どうしても家族の協力がある状態で日常生活状況を考えてしまいます。そのため、必要以上に日常生活能力に判断してしまいますので、注意が必要です。しかし、当ホームページに以前記述したとおり、医師も多忙であり、診断書の作成はとても大変な仕事です。そのため、精神の障害の場合、日頃から医師と患者(およびその家族)の間でコミュニケーションを取りながら、7つの項目に関する日常生活能力を、正確に伝えることが重要であると考えています。