障害年金の基礎知識

対象となる疾病

部位傷病名(代表的なもの)下記は代表的な傷病名です。下記以外であってもほとんどの傷病が障害年金の対象となります。
白内障/緑内障/網膜色素変性症/ブドウ膜炎/眼球萎縮/網膜脈絡膜萎縮/糖尿病性網膜症/網膜剥離/など
メニエール病/神経性難聴/感音性難聴/突発性難聴/頭部外傷または音響外傷による内耳障害/など
鼻腔機能
外傷性鼻科疾患/急性副鼻腔炎/など
そしゃく・嚥下機能・言語機能
喉頭摘出術後遺症/上下顎欠損/失語症/咽頭腫瘍/脳血栓による言語障害/喉頭がん/咽頭がん/など
肢体
脳卒中/脳出血/ 脳梗塞/脳腫瘍/くも膜下出血/多発性硬化症/パーキンソン病/シャルコーマリートゥース病/重症筋無力症/関節リウマチ/脊髄損傷/進行性筋ジストロフィー/脊柱管狭窄症/虚血性骨壊死/変形性股関節症/球脊髄性筋萎縮症/ギランバレー症候群/膠原病/骨腫瘍/上肢または下肢の離断または切断/外傷性運動障害/皮膚筋炎など
精神
うつ病/双極性感情障害/統合失調症/知的障害/自閉症スペクトラム/アスペルガー症候群/広汎性発達障害/高次脳機能障害/アルツハイマー病/ダウン症候群/若年性認知症など
呼吸器疾患
肺結核/気管支喘息/慢性気管支炎/肺線維症/慢性呼吸不全/じん肺/膿胸/など
心疾患
心筋梗塞/狭心症/心筋症/大動脈瘤/心臓弁膜症/大動脈解離/など
高血圧
高血圧性疾患/悪性高血圧/高血圧網膜症/など
腎疾患
慢性腎不全/慢性腎炎/ネフローゼ症候群/慢性糸球体腎炎/人工透析/など
肝疾患
肝硬変/多発性肝腫瘍/肝がんなど
血液・造血器・その他の障害
臓がん/乳がん/胃がん/子宮頸がん/膀胱がん/直腸がん/人工肛門/ 多発性骨髄腫/肺がん/白血病/悪性リンパ腫/その他難病や疾患/など

障害年金を受給するための3つの要件

障害年金を受給するためには、原則、以下の3つの要件を満たさなければなりません。

① 初診日要件

「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日のことです。この「初診日」がとても重要になります。通常は複数の病院に通院していた場合が多いので、一番初めに受診した病院で「受診状況等証明書」が取得出来ればベストです。しかし、転々と病院を変えて受診した場合や誤診された場合、もしくは、初めて病院にかかってから年月が経ちすぎている場合や既に廃院している場合は、「受診状況等証明書」の取得が難しくなります。
また初診日だと思っていた病院で受診状況等証明書が取得出来たとしても、発病から初診までの経過において前医の記載があれば、前医の病院で受診状況等証明書を取得しなければならない場合も出てきます。
障害年金を申請する際に、受診状況等証明書を提出することが出来なかったため、安易に「受診状況等証明書が添付できない申立書」だけを提出しても初診日を証明したことにはならないので、ご自身で手続きする場合には充分に注意して下さい。仮に初診日を証明出来なかったことで、却下等の決定が下されてしまうと、審査請求等で覆すのは容易ではありません。

※初診日に関して、平成27年10月1日から厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令が施行され、20歳以降に初診日がある場合も第三者証明が認められるようになりました。障害年金請求者の当時の状況について知っていることを申し立てる第三者に当てはまるのは、友人や隣人、事業主、同僚、民生委員、当時通院していた病院の医師、看護師などです。原則複数名必要とされ、親族(3親等以内)の方は第三者から除かれます。
第三者証明の場合、20歳前に初診日がある場合と20歳以降に初診日がある場合では、取り扱いが異なりますが、基本的に第三者証明の他に、初診日を証明するための客観的な参考資料も必要になりますので、細心の注意を払わなければなりません。

カルテ以外で初診日を証明するための根拠になりうる可能性があるもの(一部です)

  • ・身体障害者手帳等の申請時の診断書
  • ・生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
  • ・入院記録、診療受付簿
  • ・母子手帳
  • ・健康保険の給付記録(レセプトを含む)
  • ・お薬手帳、医療機関発行の領収証、診察券、投薬袋
  • ・紹介状
  • ・上記の他、初診日を客観的に証明できるもの

② 保険料納付要件

障害年金を申請するためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は問われません。
(1)初診日のある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

原則、障害年金を申請するためには、初診日の前日までに保険料をきちんと納付しているか免除していなければなりません。 例えば、突然、病気やケガで障害の状態になってしまい、障害年金の申請を考えたとします。しかし上記の(1)または(2)の要件を満たしていないため、その時点であわてて過去の未納分をまとめて納付したとしても、障害年金を申請する上で、保険料納付要件を満たしたことにはなりません。
初診日の前日までに保険料は納付していないけれど、保険料の免除を受けている場合は、保険料納付要件の加入期間に算入してもらえます。

障害年金を申請するための保険料納付要件にも例外はあります
※保険料納付要件の例外 20歳前に年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は障害基礎年金(国民年金)の対象となります。(20歳前障害)この場合、保険料納付要件は問われません。

③ 障害認定日要件(または事後重症要件)

1.障害認定日要件(障害認定日に一定以上の障害状態に該当する場合)

障害認定日要件とは障害認定日(初診日から起算して1年6ヵ月を経過した日または1年6ヵ月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日)に、障害等級1級または2級の障害状態に該当することです。(障害厚生年金は3級以上の障害状態に該当すること)
障害認定日請求をするためには、障害認定日に障害認定基準等により、一定以上の障害状態に該当しなければなりません。 障害状態を判断するために、国民年金・厚生年金保険障害認定基準というものがあります。(下記リンク先参照)
これは傷病ごとに詳細な認定基準を定めてあり、診断書等で障害認定基準に該当するかどうか総合的に判断されます。障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級、2級、3級とあります。

(1)障害認定日請求(本来請求と遡及請求)

障害認定日請求には下記の2つの請求があります。

①本来請求

障害認定日より1 年以内に請求することを本来請求と言います。
しかし、障害認定日から1年以内に請求するということは、とても難しいかもしれません。なぜなら、障害年金の制度がよく知られていないということもあり、ほとんどの方が、障害認定日を意識しながら通院しているわけではないからです。初診日以降早い段階で、障害年金の制度を知り得た場合、本来請求出来る可能性はあります。

②遡及請求

障害認定日より1年以上経過してから請求することを遡及請求と言います。
障害認定日から相当な期間を経過してから、障害年金という制度があることを知った場合、一定の条件を満たした上で、過去にさかのぼって請求することが出来ます。しかし、遡及請求することも簡単な事ではありません。例えばカルテの保存期間が5年のため、障害認定日頃の診断書を取得することが出来なかった場合は、遡及請求することが難しくなります。しかし、遡及請求をおこなって、障害年金の受給権が発生した場合は、最大で5年分の年金をさかのぼって受け取ることが出来ます(5年より前の分は時効によって受け取ることが出来ません)

(2)事後重症要件 (障害認定日に障害等級に該当しないが、その後、障害等級に該当する場合)

事後重症要件とは障害認定日(初診日から起算して1年6ヵ月を経過した日または1年6ヵ月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日)に、障害等級に該当しない場合であっても、その後病状が悪化して、障害等級1級または2級の障害状態に該当することです。(障害厚生年金は3級以上の障害状態に該当すること)
この場合、事後重症請求をおこなうことが出来ます。
事後重症請求をおこない障害年金の受給権が発生すると、請求した翌月分からの年金が支給されます。ただし、遡及請求のように過去にさかのぼって支給されるわけではありません。
そのため、請求が遅れれば遅れるほど、不利益を被ってしまいます。しかし、初診日要件や障害認定基準等を満たしていないにも関わらず、安易な手続きをしないように、ご自身で請求する際は充分に注意して下さい。

障害基礎年金の額 令和6年度(令和6年4月分から)

※初診日において国民年金に加入していた場合は、障害基礎年金の対象となります。
※20歳前の年金制度に加入していなかった期間に初診日がある場合も、障害基礎年金の対象となります。

障害基礎年金1級
1,020,000円(子どもがいる場合はさらに加算額がつきます)
障害基礎年金2級
816,000円(子どもがいる場合はさらに加算額がつきます)

※障害基礎年金は1級と2級があります(障害基礎年金に3級はありません)

子どもの加算額

1人目・2人目の子
(1人につき) 234,800円
3人目以降の子
(1人につき) 78,300円

※子どもとは下記の方に限ります。
○18歳年度末(高校を卒業する年齢)までの子ども
○障害等級1級または2級の障害状態にある20歳未満の子ども

障害厚生年金の額 令和6年度(令和6年4月分から)

※初診日において厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の対象となります。

障害厚生年金の額は、厚生年金に加入していた期間の長さや、給与の額(お支払いしていた厚生年金の保険料の額)などで異なります。
障害厚生年金の2級以上の受給権が発生した場合、障害基礎年金もプラスされます。

障害厚生年金1級
報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級
(※1 配偶者または子どもがいる場合はさらに加算額がつきます)
障害厚生年金2級
報酬比例の年金額+障害基礎年金2級
(※1 配偶者または子どもがいる場合はさらに加算額がつきます)
障害厚生年金3級
報酬比例の年金額 (最低保障額 612,000円)
障害手当金(一時金)
報酬比例の年金額×2年分 (最低保障額 1,224,000円)

障害厚生年金は障害基礎年金とは違い1級から3級まであります。
3級の場合には、年金額が低くなりすぎないように最低保障額が設けられています。
※1 配偶者または子どもの加算額がつくためには、一定の条件が必要です。

配偶者の加算額

配偶者の加算額
234,800円

配偶者の加算額は配偶者の年齢や収入及び厚生年金期間等によって加算が認められない場合や支給停止になる場合があります。

(3)20歳前障害基礎年金

20歳前障害基礎年金とは、生まれつき障害のある方や、20歳前に病気や事故によって障害状態になってしまった方、また20歳前の傷病が原因で20歳を過ぎた後に障害状態になった方が、20歳前の年金制度に加入していなかった期間に初診日のある場合、保険料納付要件を問われることなく、障害基礎年金を請求することができます。しかし、障害基礎年金に3級は存在しないので、2級以上の障害状態に該当しなければ障害基礎年金は支給されません。
20歳前でも厚生年金に加入中に初診日がある場合の障害年金については、本来の障害厚生年金や障害基礎年金の対象となり、20歳前障害基礎年金の対象とはなりません。

20歳前障害基礎年金の要件

(1)初診日から1年6カ月経過した日または1年6ヵ月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日が20歳前にある場合
この場合は、20歳に達した日が障害認定日となり、障害等級1級または2級に該当する場合に、障害年金を請求する事ができます。

(2)初診日から1年6カ月経過した日または1年6ヵ月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日が20歳以後にある場合
この場合は、通常の障害年金と同じく、初診日から1年6カ月経過した日または1年6ヵ月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日が障害認定日となり、障害等級1級または2級に該当する場合に、障害年金を請求する事ができます。

上記(1) と(2) の障害認定日に、障害等級1 級または2 級に該当しない場合であっても、その後病状が悪化して、障害等 級1 級または2 級に該当する場合は、事後重症請求をおこなうことが出来ます。

20歳前の障害基礎年金を受給すると所得制限の対象になる場合があります

20歳前障害基礎年金の受給権が発生した場合、保険料納付要件を問われることなく、障害基礎年金が支給されることになります。そのため、一定以上の所得がある場合は、所得制限を受けることになります。

PAGE TOP