日本の年金制度は、「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」の3種類の公的年金で構成されています。
もちろん、これらの年金は国から支給されるものです。
その中の「障害年金」は、病気やケガで障害のある状態になった場合に、支給される年金です。
「障害年金」という言葉を知っている方は多いのですが、構造が複雑すぎてあまり理解されていないのが現状です。
「障害年金」を申請出来る状態であっても、基本的に誰も教えてくれるわけではないので、自発的に申請手続きをおこなわなければなりません。
そのため、障害の状態にあるのにも関わらず申請出来ることさえ知らずにいる方や、「障害年金」を申請する時期が遅れたために、数年分の「障害年金」が時効のため受け取れなくなってしまう場合もあります。また、「障害年金」は、基本的に3つの要件をクリアしなければ受け取ることができません。申請したからと言って「障害年金」が必ず支給されるわけではないのです。「障害年金」は、書類を作成して、日本年金機構に「申請」をおこない、「審査」を受け、「認定」されて初めて「障害年金」が支給されることになります。
しかし、請求者本人が、申請手続きを簡単に考えてしまい、安易な申請方法で不支給または却下になってしまう場合があります。一度、不支給等の決定が下されてしまうと、それを審査請求等で覆すことは容易なことではありません。
なぜなら日本年金機構も不支給等の決定に至るまでの間に、慎重かつ綿密に審査をおこなっており、充分な根拠もって決定が下されるからです。
そのため、現実的には最初の申請時に最善を尽くすことが重要になります。
社会保険労務士は年金の請求代理業務をおこなえる唯一の国家資格者です。
社会保険労務士は、本人や家族にヒアリング(聞き取り)しながら、初診日や保険料納付要件、そして診断書等で障害状態を確認して、ベストな申請方法を考えます。
私たちはこれから「障害年金の申請手続き」=「社会保険労務士」という世の中の動きになっていくと考えています。
しかし、当事務所に障害年金のご相談をされる方でも、申請手続きに関して消極的になってしまう方もいらっしゃいます。依頼者のお気持ちに迷いがある場合、無理に申請手続きを勧めることはありません。もしかしたら、自分の中で受け入れられない抵抗や葛藤があるかもしれないからです。
障害年金は、一人、一人、内容や申請方法、等級の決定などが違ってきます。
「障害年金」を受給するための可能性を見出すことも、社会保険労務士の「実務経験と専門性」が大きく影響してきます。
そして何よりも残念に思うことは、「障害年金」の制度を知らない方が、数多くいらっしゃると言うことです。
私たちは機会があれば障害年金の制度についてお話することはありますが、ご自身の気持ちの中で迷いがある場合には、申請手続きを勧める事はありません。また申請手続きに前向きであっても 当事務所に依頼する事で発生する料金やサービス内容に納得されない場合も、同様にご依頼を勧める事はありません。依頼されるかどうかを迷われている場合、当ホームページの内容を充分に確認して頂き、ご家族等とよくご相談をなさってから依頼されるようにお願い致します。
診断書とは、医師が医学的見地に基づいて作成したものであり、傷病名や医師の所見、治療の経過や現症、診断結果や予後などが記載されている証明書です。
もちろん、診断書を作成することは医師の仕事であり、社会保険労務士の仕事ではありません。
それゆえ、医師が作成した診断書の内容について、原則尊重すべきものであると私たちは考えています。
その一方で、社会保険労務士は障害年金の専門家ですが、医師は医療の専門家であって障害年金の専門家ではありません。
また障害年金の手続きは社会保険労務士の独占業務であり、社会保険労務士の開業登録をしていない他の士業が、障害年金の請求代理業務をおこなうことは禁止されています。
もちろん、医師が患者の代わりに障害年金の請求代理業務をおこなうことも出来ません。
また、医師によっては障害年金の申請手続きに積極的な方がいる一方、何らかの理由により肯定的に捉えない方もいらっしゃいます。それは医師の考え方やスタンスなので、申請手続きをおこないたい方は事前に医師に確認しておくことも重要です。
社会保険労務士と医師は、それぞれ仕事の役割が違います。そのため、お互いの仕事の領域を絶対に侵してはいけません。
社会保険労務士は職業倫理を保持するため5年に1度、倫理研修を受講しなければなりませんが、その中で社会保険労務士による医師に対しての、診断書の記載内容等に関する働きかけについて問題視されている点があるため、当事務所では医師との面談や電話等における接触を原則お断りしています。
ただし、医師から社会保険労務士との面談を求める場合で、面談内容が法律上問題がなければ、臨機応変に対応することは可能です。また、医師によっては診断書を作成する際に、患者の「病歴・就労状況等申立書」を重要視するので、医師からの希望があれば、依頼者(患者)の承諾を得て、医師にお渡しすることも可能です。私たちは医師と依頼者(患者)との関係を最優先に、社会保険労務士の立場からサポートさせて頂くことを心がけております。
障害年金は原則3つの要件をクリアしなければなりません。
①初診日要件 ②保険料納付要件 ③障害認定日要件(または事後重症要件)
意外に簡単に思えるこの3つの要件に、頭を悩まされる依頼者が数多くいらっしゃいます。まず初めに「初診日要件」についてですが、
「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガで、初めて医師等の診療を受けた日のことです。
障害年金を申請する場合、初診日を特定することが出来なければなりません。
そのため、通院した病院が複数ある場合は、日本年金機構の窓口で初めてかかった病院で「受診状況等証明書」を取得して下さいと説明されるはずです。「受診状況等証明書」とは初診日を証明するための書類です。
しかし、この「受診状況等証明書」を取得出来ないケースがあります。
一般的に多い例として、5年以上前に初診日があり、カルテが破棄されている場合です。これは医師法第24条にカルテの保存期間が5年と定められているためです。「受診状況等証明書」を取得することが出来ない他の原因として、病院の医師がすでに亡くなり、廃院している場合なども考えられます。
また、病院を何度も変えている場合など、本人の記憶が曖昧になってしまい、どの病院を受診したのかさえも、わからなくなってしまう場合もあります。
その他として考えられるのは、身体の不調を感じて(例えば不眠など)、最初に内科を受診して、睡眠導入剤などを処方されたが、症状が回復しないため、その後精神科を受診した場合、2番目の病院(精神科)で傷病名が確定した場合でも、内科を受診した際の疾病と精神疾患が同一であると判断された場合は、内科で初めて受診した日が初診日になる可能性があります。障害年金の申請手続きをおこなう上で初診日の特定は必須です。
初診日を証明できない場合、「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類の提出を求められますが、これだけを提出しても初診日を証明したことにはならないので、ご自身で手続きする場合には充分に注意して下さい。
※初診日に関して、平成27年10月1日から厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令が施行され、20歳以降に初診日がある場合も第三者証明が認められるようになりました。障害年金請求者の当時の状況について知っていることを申し立てる第三者に当てはまるのは、友人や隣人、事業主、同僚、民生委員、当時通院していた病院の医師、看護師などです。原則複数名必要とされ、親族(3親等以内)の方は第三者から除かれます。
第三者証明の場合、20歳前に初診日がある場合と20歳以降に初診日がある場合では、取り扱いが異なりますが、基本的に第三者証明の他に、初診日を証明するための客観的な参考資料も必要になりますので、細心の注意を払わなければなりません。
上記の初診日要件をクリアすると、次に保険料納付要件が問われることになります。
(1)障害基礎年金を請求する場合は
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は問われません。
①初診日のある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
②初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
(2)障害厚生年金を請求する場合は
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。
①初診日のある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
②初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
簡単に説明すると、初診日の前日までに、一定以上保険料を支払っていたか、もしくは免除期間を有していなければ、障害年金を申請することは出来ません。上記の(1)も(2)においても「初診日の前日において・・・・」という箇所がありますが、これは急病で倒れてしまったり、ケガをして重病と診断された後に上記の納付要件を満たしていないため、慌てて未納分の保険料を支払っても障害年金の申請手続きは出来ないと言うことです。
また「初診日のある月の前々月・・・・」とされているのは、年金の保険料は当月分を翌月末日までに納めることになっているからです。
例えば国民年金加入中の方で、11月1日に初診日がある場合、前月の10月分の保険料の納付期限は来ていませんが、前々月の9月分の保険料は10月末日が納付期限なので、初診日の前日において、「未納」もしくは「納付済み」が判断されてしまいます。
※20歳前障害の場合は、基本的には保険料納付要件は問われません。
上記の初診日要件と保険料納付要件をクリアすると最後に障害認定日要件(または事後重症要件)を問われることになります。
障害認定日とは以下の日ことを言います。
(1)初診日から起算して1年6ヵ月を経過した日
(2)1年6ヵ月以内に症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日
原則、障害年金は初診日から1年6ヵ月を経過しなければ請求できません。
しかし、症状が固定して治療の効果が期待できない状態の場合、1年6ヵ月を待たずに請求することが出来る場合があります。
障害認定日要件とは
上記の障害認定日において障害等級1級または2級の障害状態に該当することです。(障害厚生年金は3級以上の障害状態に該当すること)この場合、障害認定日請求(※本来請求または遡及請求)をおこなうことが出来ます。
しかし、障害年金という制度を知らなかったため、障害認定日に気づかず、何年も経過してしまったという事例もあります。その場合、気づいた時点で障害認定日請求(遡及請求)をおこない、受給権が発生した場合は最大5年分まで遡って支給されることになります。しかし、障害認定日請求(遡及請求)は、障害認定日から3カ月以内の診断書が必要なため、障害認定日頃に病院を受診していなければ、診断書を取得することが出来ません。また現在通院している病院と障害認定日頃に通院していた病院が違う場合があります。その場合、障害認定日頃に通院していた病院が廃院してしまったため、診断書を取得出来ない場合もあります。もしくは、障害認定日頃に通院していた病院が初診で廃院している場合は、受診状況等証明書などの初診日を証明する書類も取得出来ないため、上記の初診日要件もクリア出来ないことも考えられます。その他、カルテの保存期間が5年のため診断書を取得出来ない場合も考えられます。仮に、障害認定日頃の診断書を取得出来たとしても、その診断書の内容が障害等級に該当しなければ、障害年金は遡って支給されません。
事後重症要件とは
上記の障害認定日に障害状態に該当していない場合でも、その後病状が悪化して障害等級に該当することです。この場合、事後重症請求をおこなうことが出来ます。
遡及請求の場合は基本的に障害認定日から3カ月以内の診断書と現在の診断書(請求日以前3カ月以内の症状が書かれたもの)の2枚が必要です。
本来請求の場合は、障害認定日から3カ月以内の診断書1枚が必要です。
事後重症請求の場合は障害認定日の診断書を取得することが出来ないので、基本的に現在の診断書(請求日以前3カ月以内の症状が書かれたもの)の1枚が必要となります。
診断書の取得は症状固定などによる障害認定日の違いがあるので注意が必要です。ご自身で申請手続きをする場合は、必ず日本年金機構の窓口で確認するようにして下さい。
※本来請求とは障害認定日から一年以内に請求することです
障害認定日請求(本来請求と遡及請求)と事後重症請求、どちらにおいても、診断書の内容は重要になります。
障害年金を受給するためには、診断書の内容が、障害等級に該当する必要があるからです。初診日要件や保険料納付要件をクリアしていても、最後に診断書の内容が障害等級に該当しなければ、障害年金は支給されません。
精神疾患の場合は、診断書内の日常生活能力の判定と日常生活能力の程度が受給の判定に大きく作用するため、患者(もしくは家族等)が、医師とうまくコミュニケーションを取りながら、正確な病状や日常生活の状況を伝えていることがとても重要になります。
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの治療経過、自覚症状の程度や日常生活状況など、ご自身の状態を申立てするための書類ですが、どのように書いて良いのかわからないため、当事務所にご依頼される方がほとんどです。
書き方はマニュアルがあるわけではないので、「経験の積み重ね」としか言いようがありません。しかし、依頼者にとっては基本的に一度だけしか書かない書類なので、「経験の積み重ね」と言われても困ってしまうと思います。しかし、病歴・就労状況等申立書には「記入する前にお読みください」と細かく注意事項の記載がありますので、ご自身で記入する際は必ずお読みになって下さい。また、焦点がずれた書き方や診断書との整合性が取れない書き方をしないように慎重に記入して下さい。以前、自分で手書きをした病歴・就労状況等申立書を持参した依頼者がいました。その方の病歴・就労状況等申立書は、読み返しては訂正することを繰り返したため、訂正印で埋め尽くされ、苦心の跡が垣間見えました。病気のため日常生活を送ることが、困難にも関わらず、申請手続きのための書類を作成しなければならないことは、ご自身にとってとても苦痛だったと思います。
当事務所では、社会保険労務士が依頼者からヒアリング(聞き取り)をして、病歴・就労状況等申立書の作成を致します。また、医師によっては診断書を作成する際に、患者の「病歴・就労状況等申立書」を重要視するので、医師からの希望があれば、依頼者(患者)の承諾を得て、医師にお渡しすることも可能です。